| 当年度の wOBA の記述力 | |||
| ベースモデル: wOBA ~ OPS(R² = 0.986) 2021 - 2025 min. 300PA / n = 1,395 |
|||
| 指標 | 偏回帰係数 [95%CI]1 | 有意性 | ΔR²2 |
|---|---|---|---|
| 打率 | +0.0011 [+0.0008, +0.0014] | *** | 0.0005 |
| HR数 | -0.0028 [-0.0031, -0.0025] | *** | 0.0029 |
| HR/PA | -0.0030 [-0.0033, -0.0028] | *** | 0.0039 |
| HR/AB | -0.0029 [-0.0031, -0.0026] | *** | 0.0033 |
| 1 説明変数のみを標準化している | |||
| 2 ベースモデルに各指標を加えたときの R² の増分 | |||
| *** p<.001, ** p<.01, * p<.05 / Data: FanGraphs | |||

お馴染み、MLB.com のモバイル版選手ページです。
MLB ではすでに OPS が打撃指標界の売れっ子エースになりましたが、OPS単体ではなく他指標も併記されることも多いです。一つの代表格はスラッシュラインと呼称される打率・出塁率・長打率の三兄弟、もう一つは上記画像のような打率・HR数でしょうか。
打点も挟まることはまだ多いとは思います。
スラッシュラインについては太古の時代から定期的にその加重について検証されておりますので、今回は打率・HR数について簡単にまとめます。個人的には、近年は打率への注目度が下がる中で、HR数については相対的にも注目度が上がっている気がするというもの今回の検証の動機です。
wOBA の記述における有用性
ここでは打撃の総合的な価値を wOBA とします。打撃の総合的な価値を知りたいときに OPS 以外に打率や HR数を見る意味はあるでしょうか。
OPS と wOBA の相関の高さは周知の通りですので、冗長となりうるパートですが、その方向や程度を改めてまとめておきたいと思います。
表 1 は当年度の wOBA を当年度の OPS 単体で予測するベースとなる線形モデルに、打率と HR数という変数を追加した場合の記述力の変化をまとめたものです。
300打席で区切っているとはいえ、HR数についてはその実数を割合に変換しているファンも多いかと思いますので HR率についても調べています。
どの指標も記述力の向上は微々たるもので、HR/PA を最適に考慮しても 0.986 の決定係数が 0.990になる程度ですので、打者の価値を知りたいときに OPS 以外は気にしないことが最善手となるでしょう。偏回帰係数的にも wOBA の少数点第三位を気にする人はいない(いたとしたらそれもそれで問題)ので同じ結論になるでしょう。例えば 2022年ジャッジでも HR/PA の Zスコアは 3.76 です。つまりジャッジレベルに突き抜きてようやく wOBA の少数点第二位レベルのバイアスになるということです。そこまで突き抜けた個人の話になるなら、なおさら見る意味が薄れます(素直に wOBA を見ましょう)。
今回使用した説明変数を標準化した偏回帰係数は当該説明変数の集団内の 1SD が目的変数(今回は wOBA)に及ぼす影響ですので、ジャッジの例で言うと、HR/PA の偏回帰係数 [-0.0030] × ジャッジの HR/PA の Zスコア [3.76] = -0.011 となり、このモデルではジャッジを OPS で評価すると wOBA で言うと、0.011 分過大評価するという推測ができます。
バイアスの方向については出塁率と長打率と OPS の関係から自然に解釈できます。OPS は出塁率を過小評価していますので、出塁率の大部分を構成している打率はプラスの方向へのバイアス、逆に長打率に大きな影響を与える HR系指標はマイナスの方向へのバイアスになります。
wOBA の予測における有用性
次に wOBA の予測における文脈での有用性です。
| 翌年度の wOBA の予測力 | |||
| ベースモデル: wOBA ( N+1 Year ) ~ OPS ( N Year )(R² = 0.231) 2021 - 2025 min. 300PA / n = 800 |
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| 指標 | 偏回帰係数 [95%CI]1 | 有意性 | ΔR²2 |
|---|---|---|---|
| 打率 | -0.0046 [-0.0075, -0.0017] | ** | 0.0090 |
| HR数 | +0.0062 [+0.0031, +0.0093] | *** | 0.0147 |
| HR/PA | +0.0003 [-0.0027, +0.0033] | p = 0.850 | 0.0000 |
| HR/AB | +0.0011 [-0.0019, +0.0042] | p = 0.474 | 0.0005 |
| 1 説明変数のみを標準化している | |||
| 2 ベースモデルに各指標を加えたときの R² の増分 | |||
| *** p<.001, ** p<.01, * p<.05 / Data: FanGraphs | |||
表 2 は翌年度の wOBA を当年度の OPS 単体で予測するベースとなる線形モデルに、打率と HR数という変数を追加した場合の予測力の変化をまとめたものです。
まず打率ですが、大方の予想通り負の方向へのバイアスが有意に確認できます。BABIP や Sweet Spot% の負の方向へのバイアスは周知の通りですのでその共線性と捉えやすいでしょう。±2SD で wOBA で言うと .010 程度のバイアスがあるという温度感を持てます。近年で言うと、-2SD は .200、+2SD は .310 程度です。
HR ですが、HR数と HR率で有意性に大きな差があります。これは HR数に含まれる打席数という交絡の影響だと推測できます。実際にこれらのモデルに打席数という変数も含めると HR数の大半は打席数由来であることが確認できました。つまり、打席数が多い打者ほど正のバイアスが確認できるわけですが、これは生存バイアスで多くを説明できそうです。例えば OPS .600 の打者ですぐに起用されなくなる打者と起用され続けられる打者を考えると分かりやすいでしょう。OPS .900 の打者は基本使われ続けますが、OPS .600 の打者は打力に期待ができない打者ほど起用されにくくなり、打力に期待できる打者との不均衡が生じます。演繹的な推論ですが、wOBA を見れば済む話題で帰納的な推論もするのは非効率なのでこれに留めておきます。
Barrel% のバイアスを考えると HR率も正の方向へのバイアスを持っていると予想していましたが、そうなりませんでした。